ゼロイチの達人
香港健康食品業界に日本の技術で挑む
懿生堂(香港)有限公司
CEO 澤原 隆司氏
https://www.pocketpageweekly.com/business/126148/
大丸百貨店のマーチャンダイザー、デコレーターからキャリアをスタートさせた澤原さん。その後、店舗デザイン、内装設計、厨房機器・設計、飲食コンサルタントなどを経て香港モスフード社長を経験し、2023年に現職であるE-SEIDO(懿生堂)のCEOへ。彼の経歴を履歴書にしたためるならば、何枚、何十枚と要しそうだが、「就職活動をしたことがない」と笑顔で話す澤原さんにご経歴から現在のお仕事内容を伺った。
初めて香港にいらっしゃったのは日系百貨店の黄金期だったとか?
そうですね。1988年の来港当時、三越、大丸など多くの日系百貨店や量販店が軒を連ねていました。大丸退職後にヤマトマネキンに就職し、香港やシンガポールのマネージメント全般、室内装飾業務を行うことに。香港AEON1号店を手がけたことを昨日のように思い出されます。
その後、1998年に日系内装デザイン会社にご縁をいただき、マレーシアで伊勢丹やAEONなどのプロジェクトに従事しました。2012年に香港モスフード社長へ就任し、お隣広州をはじめ、シンガポールやインドネシアも兼任することに。香港では「50店舗展開(実際は49店舗)」をほぼ網羅したことで卒業いたしました。
およそ10年単位でキャリアアップをされているようにお見受けします
意図はしていないのですが、だいたい10年くらいで新規事業が安定し、軌道に乗ってくるんです。自分が今まで培ってきた経験や知識を生かし、会社や人をつなげ新しい価値を生み出すことにやりがいを感じますね。また10年くらいでその会社のスタッフの方が私よりずっと上手にオペレーションできるようになるので、安心して任せることができます。
2023年に現在のE-SEIDO・CEOになったいきさつを教えてください
弊社はもともと1973年に科学者である佐藤一雄によって台湾で創業し、その後中国に、2012年には香港にオフィスと工場を開設しました。佐藤家と私はもともと親戚でしたので、薬剤師・漢方医である二代目現会長(佐藤恵子)がアメリカオフィスを展開するタイミングで、私が香港マーケットの代表になりました。香港に住んでいる方ならおわかりだと思いますが、香港は薬局の数がとても多いですよね。街中でも一軒挟んでまた薬局というような現象をよく見ますし、涼茶や漢方スープを飲む習慣があります。このように香港の方は、世界の中でも健康意識がとても高い地域であるということがわかります。E-SEIDOのオファーをいただいた時に、高齢化に伴いヘルス業界のマーケットは拡大し続けることもわかっておりましたので、次なる挑戦の場に決めた次第です。
澤原さんが就任して開始したプロジェクトはありますか?
一つはハラル認証を受けたことです。みなさんは薬やサプリのカプセルが豚や魚などの動物性たんぱく質から作られていることをご存知ですか? こうした動物由来のカプセルは安価で品質も安定している一方で、原料が牛や豚由来であることから、宗教上の理由で近年では使用を避けるケースが増えてきています。弊社はこの点に着目し、ムスリムの方でも安心して摂取していただける製品開発を進め、認証を受領することができました。
もう一つはOEM製品の強化です。物流網が拡大し、外地から商品が入り競争は激化している昨今、健康志向の高い消費者は日本や香港メイドのクオリティーの高いものを求めるようになっています。以前よりお付き合いのあったcity’super様やA-1 Bakery様と協力しプライベートブランドを展開、小ロットでコスト的にも量的にも気軽に手に取っていただける商品を開発しました。
その他に貴社の売れ筋商品を教えてください
近年では老化防止や健康維持に効果があると期待される「NMM」が人気です。ニコチンアミドモノヌクレオチド(Nicotinamide mononucleotide)というビタミンB3の中に含まれる成分の略で、年齢とともに生成量は減少していくので、サプリなどで補った方がいいとされています。
皆さんは海外製の薬やサプリメントなど、大きさや量で飲みにくいと感じたことはありませんか? 特にサプリの世界では、開封するとカプセル同士や容器と付着していることが散見されます。私が日本の技術に対し驚いたのが、カプセルひとつとっても付着しにくいコーティングや温度管理を徹底して行っているところです。また私たち開発チームは、服用するサプリメントの効能によって、胃や腸などカプセルが溶ける過程を設計しています。やはりこれらの日本技術は香港をはじめ世界にアピールできるものですね。
今後の展望をお聞かせください
上述の通り日本の健康食品技術は本当に素晴らしい。私もこの業界に入り知らないことに出会うと驚き、そしてワクワクするんです。「薬は飲みたくないけれど、長生きしたい」このような誰もが持つ時代のニーズに、弊社の製品がますます応えていけるように頑張りたいと思います。